重度後遺障害の将来の介護費用

重度後遺障害の将来の介護費用

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重度後遺障害の将来の介護費用

被害者に重度の後遺障害が残った場合、病院や自宅において、付添介護を要する必要が出てくる場合があります。この場合には、付添介護費用を損害として加害者等に損害賠償請求します。

 

介護の内容については、介護に要する時間や程度によって、「常時介護」「常時監視」「随時介護」「随時看視」「相応の介護」等の用語が判例上使用されています。もちろん、「常時介護」の方が「随時介護」よりも介護の負担が大きく、介護料も高額となります。
介護の「常時性」を立証するには、主治医の診断書における常時介護の必要性についての記載、医師等による意見書、看護記録、リハビリテーション実施記録、理学療法・作業療法に関する報告書等により立証する他、自宅の写真、介護状況に関するビデオや日記等により、常時介護の必要性を具体的に立証してゆくことになります。

 

ちなみに、理学療法とは、「身体障害に対して,その基本動作能力を回復させるために行う運動療法や物理療法。現在では,機能訓練や回復訓練といわれる運動療法や日常生活動作訓練が主体となり,一般理学療法とされている物理的因子を用いる物理療法は従である。」(医学書院医学大辞典)。作業療法とは、「社会生活をするうえで,患者が必要とする,あるいは目標とする機能を作業を通して獲得したり,障害の程度を和らげるために行われる。ここでいう障害は,機能障害,能力障害,社会的不利を含む広義のものである。その結果,患者は日常生活動作の自立にとどまらず,社会的,心理的適応能力の改善もはかられる。」(医学書院 医学大辞典 )両療法とも、医師の指示に基づいて理学療法士及び作業療法士が行います。

 

さらに、最近では、FIM(機能的自立度評価法)も参考にされています。これは、その場で何かをさせてADL(日常生活動作)の能力を評価するのではなく、生活している状況をそのまま採点するものです。参考までにFIMの評価項目は以下のとおり。

 

  • 1. 運動系(身体障害に関連)
  • 2. 食事、整容、清拭、更衣・上半身・下半身、トイレ動作

    排尿・排便管理、ベッド・椅子・車椅子・トイレ移乗、浴槽・シャワー

    歩行、車椅子、階段

  • 3. 認知系(高次脳機能障害に関連
  • 4. 理解、表出、社会的交流、問題解決、記憶

 

そして、「要介護」は、後遺障害等級の1級、2級だけではなく、3級から5級についても、事案により判例上要介護が認定されているものがあるので、要介護性を積極的に主張・立証してゆくべきです。この境界線は、「労務に服することはできないが、とはいても2級に該当する程度の障害ともいえない。しかし、多少の監視や声掛けを行う者が傍にいることは将来においても必要と考える。」(「高次脳機能障害と損害賠償」吉本智信著、株式会社自動車保険ジャーナル、142頁)というような場合です。

 

赤い本では、自宅における常時介護の場合、「医師の指示または症状の程度により必要があれば被害者本人の損害として認める。職業付添人は実費全額、近親者付添人は1日につき8,000円。」と説明してあります。但し、近親者が職業を有しており、介護のために仕事を休業しなければならないときは、職業付添人の実費を上限として、介護費が認められる可能性がありますので、当該近親者の源泉徴収票、給与明細、休業損害証明書等を提出して主張・立証すべきです。

 

将来についても同様ですが、職業付添人の将来の実費をどう立証するかが問題となります。平成12年4月1日に介護保険制度の施行されましたが、それ以降介護費用の高額化が進んでいます。しかし、判例では、将来的には、介護サービスの充実等により、安価がサービスの出現が予測されることも踏まえ、かつ「損害の控えめな算定」という観点から、現在介護費用をそのまま認めず、ある程度減額して認める傾向にあります。

 

具体的には、職業付添人の場合には、1日につき10,000円から13,000円で認定するケースが多いようです。

 

その中で、高額に認めた事例としては、1. 1日につき2万円(大阪地裁平成5年2月22日判決・交民26巻1号211頁、大阪地裁岸和田支部平成14年7月30日判決・判例時報1807号108 頁)、2. 1日につき18,300円(東京地裁八王子支部平成12年11月28日判決・自保ジャーナル1388号)がある。

 

そして、更に画期的判決としては、1日につき24,000円を認めた東京地裁平成15年8月28日判決(判例時報1839号110頁)がある。この判決は、現在の介護費としては、1日あたり4万円を下らないとしながらも、介護保険制度が検討・見直しを予定されていること、今後介護方式が多様化され、より安価な介護方式が提供されることが予測されること、被害者死亡まで現在の介護費の水準が維持される蓋然性は低いことを考えると「損害の控えめな算定」の観点からは、現在の介護費を基準として将来の介護費まで定めることは加害者に酷な結果となる、という理由で、1日につき24,000円の一時金賠償を認めました。

 

この事案では、加害者側が、より安価な介護サービスが存在することを主張して、1日あたりの介護費を争いましたが、被害者側で複数の介護サービス会社の見積もりを取ったこと、裁判所からの釈明により、加害者側が安価なサービス業者として提案した介護サービス会社についても、被害者側で実際に被害者の介護を依頼した場合には、1日につき4万円に近い金額になったこと、等を理由に1日あたりの介護費を4万円と認定しました。今後も加害者側は、1日あたりの介護費を争ってくる可能性がありますので、立証に注意が必要です。

 

上記のように、一時金賠償方式を採用した場合には、現状では、どうしても実際の介護費よりも減額された金額で認定されてしまうようです。これを解決するには、将来の介護費用についてのみ定期金賠償方式を採用する方法があります。定期金賠償方式とは、通常の損害賠償のように単に「1,000万円を支払え。」とするのではなく、「太郎さんが78歳に至るまでの間、毎月末日限り金30万円を支払え。」というように、定期金の方式で支払を命じる方法です。

 

定期金賠償方式が認められるかどうかは争いがありましたが、民訴法117条が定期金による判決を前提にした規定になりましたので、定期金賠償方式が認められることを前提にしてよいと思います。

 

定期金賠償方式にすると、将来、介護保険制度が見直しになる等の事情で、介護費が著しく低額化したりした場合には、加害者側は、民訴法117条により、判決の変更を求めるとができることになります。したがって、先の東京地裁で考慮した将来の介護費の不確実性の考慮要素が消滅し、現在の介護費用(先の例で言えば、1日につき4万円)を基準に判決がなされる可能性があります。実際、上記東京地裁判決では、その点に言及しています。

 

但し、定期金賠償もデメリットがあります。前述の事情変更により、通常認められる将来の介護費を下回る介護費になってしまった場合には、加害者側から変更判決の申立がなされるであろうこと、支払の不確実性(任意保険未加入であればもちろんのこと、今は保険会社といってもいつ倒産するかわかりません。)、余命の問題(一時金では、一般的に平均余命まで生き続けることを前提に将来の介護費が認定されますが、その間に死亡した場合には、判例の採用する「切断説」からは、介護費が打ち切りになる。また実際問題、植物状態の場合の余命については、裁判所の認定の方が緩やかです)等のデメリットがあります。

 

そして、定期金賠償方式に関しては、被害者が一時金賠償方式で訴えを提起している限り、裁判所は、定期金賠償方式による支払を命ずる判決ができないというのが最高裁昭和62年2月6日判決ですから、定期金賠償を求めるには、被害者側からその旨の申し立てをしなければなりません。

 

被害者側の一つのオプションですから、上記の各要素を総合考慮して、定期金賠償を求め、増額賠償を勝ち取りましょう。

 

なお、介護費ではありませんが、家屋改造費について、損害として認められるためには、傷害の程度に応じて必要な改造費でなければなりません。しかし、一般には何が必要な改造かは判断が難しいところです。その時は、医師に自宅まで来てもらい、あるいは自宅のビデオ、写真等を示して、医師に必要な改造の指示を受けて行う方が裁判で認められやすいので、費用を出してでもそのようにしましょう。

 

植物状態被害者に関する将来の雑費については、雑費として認定した上で、生活費控除をする判例、将来の雑費を否定した上で生活費控除をしない判例、雑費として認定した上で更に生活費控除もしない判例等がありますので、将来の雑費も請求しておく方が無難です。

 

介護費が必要となる方に知っておいていただきたい制度があります。独立行政法人自動車事故対策機構(NASVA・ナスバ)の介護料支給制度ないし貸付制度です。

 

昭和45年に交通安全対策基本法が制定され、昭和48年に自動車事故対策センター法が制定され、この法律に基づき同年12月に自動車事故対策センターが設立されました。

 

独立行政法人自動車事故対策機構(NASVA・ナスバ)は、特殊法人等改革の一環として解散した同センターの後を受けて、独立行政法人自動車事故対策機構法(平成14年法律第183号)に基づき、平成15年10月に設立されました。この機構で、重度後遺障害が残った被害者に対し、援護という形で、介護料を支給する制度があります。これは法律上の贈与ですので、返還義務はありません。是非ご利用下さい。

 

介護料は、自動車事故が原因で、脳、脊髄または胸腹部臓器を損傷し、重度の後遺障害を持つため、移動、食事、排泄など日常生活動作について常時または随時の介護が必要な状態である方に支給します。

 

この介護料の支給は、損害賠償責任とは無関係であり、損害賠償額から控除されることはないと解されています。

 

また市町村では、身体障害者福祉法に基づく援護が実施されていますので、受けられる給付は受けた方が良いと思います。この給付も損害賠償額から控除されることはないと解されています。

 

但し、介護保険料の保険給付については、他の社会保険と同様、給付の価額の限度で被害者の加害者に対する損害賠償請求権を取得すると規定されていますので(介護保険法21条)、和解の時に、すでに給付を受けた介護保険給付の取り扱いを明確にしておく必要があります。

 

但し、将来の介護保険給付については、判決のときは損害賠償額から控除されない扱いとなっています。