可動域制限と労働能力喪失期間

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可動域制限と労働能力喪失期間

12級6号,7号(可動域制限)と労働能力喪失期間

1 可動域制限の喪失期間について

逸失利益というのは、後遺症が残ってしまったために将来得られなくなった収入のことを言います。

後遺障害は、症状固定の時を基準として判断されますが、症状固定とは、それ以上治療を継続しても治療効果が上がらない状態になったことを言います。そうすると、後遺障害は、一生治らないことを前提としますので、本来,労働能力喪失期間は,症状固定時から67歳(働ける期間)までの期間であることが大原則です。

可動域制限については,一般的に器質的変化を伴うものであり改善が期待できないとされているため原則67歳まで認められるものが大半です。

しかし,保険会社との交渉においては,可動域制限であっても喪失期間を制限してくるものが多く,裁判例の中には実際に制限したものもあります。

そこで以下,67歳までが原則である可動域制限の後遺障害において,裁判上喪失期間が制限されたものをいくつかピックアップし,なぜ喪失期間が制限されたのかを検討してみます。

2 喪失期間を制限される場合

@ 大阪地裁平成11年12月9日判決

(32歳男子刃物研磨工が12級7号を残し「筋力訓練等による軽快可能性」から7年間14%喪失で逸失利益が認められた事案)

→原告の症状は診断書によれば,膝関節の可動域は,右の屈曲が155度,伸展が0度,左の屈曲は105度,伸展は−10度だった。原告の症状の原因は、棚障害、瘢痕によるものと診断された。

上記後遺障害による症状、その原因(棚障害)、筋力訓練等による軽快可能性に照らすと、原告(昭和38年5月1日生)は、その労働能力の14%を症状固定時(34歳)から7年間にわたり喪失したものと認められる


A 東京地裁平成9年9月24日判決

(17歳男子専門学校生が足関節機能障害等で12級相当の後遺症を残し,喪失期間が5年とされた事案)

→右平成7年12月21日の診察の結果(症状固定日は平成4年6月15日)は、時の経過により、原告の右足の可動域制限が緩和されつつあることを示すものということができ、前記のとおり治療経過が良好であったことを合わせ考慮して、労働能力喪失期間を限定する事情とはなるものということができる。


B 大阪地裁平成9年3月25日判決

(12級相当の右股関節可動域制限を残す35歳男子の事案で、5%の喪失率で素質期間を10年間とした事案) 

→(証拠略)によれば、前記認定のとおり原告は平成7年7月ころには相当症状が軽減しており、その後症状が悪化したことは証拠上認められないことに照らすと・・


C 福岡地裁大牟田支部平成2年1月30日判決

(右脛骨下端前部剥離骨折等で入通院の後、12級相当の後遺症を残したとする僧侶につき、正座する職務が困難で略座して行事を続けていること等から、喪失期間を5年間認めた事案)

→原告は現在では略座しながらも行事を遂行し、本件事故前と同程度近くまで回復していることが認められるから、後遺障害による逸失利益の計算にあたっては、右労働能力の喪失は症状固定と解される右昭和60年5月1日からの5年間とするのが相当である


D 京都地裁平成12年8月17日判決

(12級相当の右手関節機能障害を負った24歳男子派遣社員について,10年間の喪失期間を認めた事案)

→原告は、現在、携帯電話やノート型パソコンの営業及び製造に従事しているところ、症状固定後、当初は右手指のしびれや右手指尖感覚異常により仕事に支障があったが、現在では特に支障になることはなく、同年齢の同僚と比較して原告の給料が特に低いということもないが、日常生活上は種々の支障があり、右手が疲れやすく、仕事上も、重い物を持ったり細かい作業をする場合には支障が生じることが認められる。 

右認定事実によれば、原告には、右手関節機能障害により全く逸失利益が発生していないとまでは認め難いものの、右障害による労働能力喪失の程度は限定的であると言わざるを得ない。


参考1 東京地裁平成10年7月29日判決

(12級相当の右肘関節機能障害を残す事案で、症状固定時において労働に支障のない程度まで回復していることから、後遺症逸失利益が否定された事案)

→認定した事実を総合すれば、症状固定時において、原告の右肘は健側とまったく同程度の状態とまではいえないが、労働に支障がない程度まで回復しているのであるから、労働能力を一部でも喪失しているとまではいえない。したがって、逸失利益は認められない。なお、若干の症状は残存しており、この点は慰謝料で若干考慮する


参考2 大阪地裁平成13年4月19日

(左足関節の可動域制限を残し10級11号認定を受ける27歳女子歯科衛生士について,症状固定後5年間は20%,その後10年間は10%労働能力を喪失したと認めた事案)

→原告の職種は歯科衛生士であり長時間の立ち仕事を強いられることが予想されるものの、膝関節などと比べた場合、足関節の機能障害が就労に及ぼす影響は比較的小さいと考えられ、また、時間の経過とともに代償動作の習得や、障害に対する慣れで、就労への支障は逓減するものと考えられることからすれば、原告の労働能力喪失率及び喪失期間については、当初5年間につき20%、その後10年間にわたり10%程度と考えるのが相当というべきである

3 まとめ

以上の裁判例を検討してみると,喪失期間を制限する理由としてあげているのは,時間の経過によって症状が回復していること又は回復可能性が高いと医学上認められているものであること,部位及び仕事への影響といったものであることが分かります。

したがって,被害者として67歳までの喪失期間を主張する際には,可動域制限においては,当該可動域制限が時間の経過とともに回復する性質を有さないこと,被害者の職種に多大な影響を与える部位に後遺障害が生じていること,を強く主張していくべきです。