12級労働能力喪失期間

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12級労働能力喪失期間

12級13号(神経症状)と労働能力喪失期間

12級13号(神経症状)の喪失期間について

逸失利益というのは、後遺症が残ってしまったために将来得られなくなった収入のことを言います。

後遺障害は、症状固定の時を基準として判断されますが、症状固定とは、それ以上治療を継続しても治療効果が上がらない状態になったことを言います。そうすると、後遺障害は、一生治らないことを前提としますので、本来、労働能力喪失期間は、症状固定時から67歳(働ける期間)までの期間であることが大原則です。しかし、12級13号の「局部に頑固な神経症状を残すもの」という後遺障害について判例では喪失期間が10年とされることが多く見受けられます。

これは、神経障害は10年程度の期間が経過すれば、治癒していくことが一般的であるという医学的判断に基づいています。

もっとも、10年という期間は治癒することを前提としたあくまで目安として設けられた期間に過ぎないのであって,神経症状を一律10年に限定することは妥当ではありません。治癒の可能性が期待できない場合など、神経症状といってもその症状や原因、被害者の置かれた環境を異にすれば,期間も異なってくることは当然です。

そこで、以下、12級13号において、喪失期間を10年より長期で認めた裁判例と10年以下に限定した裁判例とを分析して、そのファクターを検討していきます。

 

10年より長期で認めたもの

(1) 骨折等の受傷内容を理由とするもの

@ 大阪地裁平成元年9月27日判決

(51歳主婦兼家業が右第三肋骨骨折、全身打撲等で12級相当の神経障害を残した事案につき、症状固定時である53歳から67歳まで14年間の喪失期間を認め、うち最初の7年間は14%、以降の7年間は7%で認めた事案)

→証拠によれば、原告の胸背部痛は、肋骨骨折部が癒合した際に癒合部にずれが生じ、これによる肋骨の変形部分が肋骨の直近を平行して通っている肋間神経を圧迫しているか、又は骨折の癒合の際に生ずる化骨部や骨折の際に損傷された肋骨に近接する軟部組織が治癒する際に生ずる瘢痕組織が肋間神経を巻き込んでいるために生じている可能性が大であり、このような原因で生じた疼痛は相当長期化することが多いことが認められる。

しかし、その他の原告の神経症状については、将来年月の経過とともに消失する可能性も大であると考えられ,また、胸背部痛についても、前認定のとおり治療(リハビリテーション)を続けることにより、わずかではあっても軽快してきていたことからすると、胸背部痛が将来改善される可能性を否定することもできない。


A 東京地裁平成6年8月30日判決

(頑固な神経症状を残す30歳有職主婦が、頑固な神経症状の14%喪失で67歳まで認められた事案)

→労働能力喪失期間について被告は、50歳までと主張するが、原告の12級12号の「頑固な神経症状」は頭蓋骨骨折、脳挫傷になり、その傷害の後遺症であるので、採用できない

cf この判例は骨折、脳挫傷による神経症状の場合は限定することが妥当でない旨判示しているところ,脳に障害をおったことを原因とする場合には限定していないものが多い。

例えば、京都地裁平成7年11月30日判決、大阪地裁平成14年1月22日判決、名古屋地裁平成17年8月17日判決

他にも脊椎損傷に伴う場合として、大阪地裁平成11年2月23日がある。


B 東京地裁平成12年3月8日判決

(左大腿骨頸部骨折(内側)等の傷害を負った症状固定時46歳の男子会社役員に21年間喪失を認めた事案)

→これは、左大腿骨頸部内側骨折の手術に基づくもので、しかも、その症状は緩解することはないことを併せて考えると、原告は、症状固定時である46歳から労働可能期間である67歳までの21年間にわたり、14%の労働能力を喪失したというべきである


C 大阪地方裁判所平成15年5月16日判決

(右膝後十字靱帯損傷,右膝蓋骨遠井端剥離骨折等の傷害により症状固定時28歳の女子生命保険研修生の右膝関節部の疼痛という後遺障害につき,39年間の喪失期間を認めた事案)

→同疼痛は、右膝後十字靱帯損傷及び下腿骨の後方へのずれに起因しているものと認められる以上、その改善は困難であると認められる

(2) 具体的な症状の経過を理由とするもの

@ 札幌地裁平成10年10月30日判決

(右足部挫傷等で、12級12号相当の疼痛を残す49歳専業主婦の後遺症逸失利益が67歳まで14%喪失で認められた事例)

→原告の治療経過によれば、原告の主要な症状は、札幌外科記念病院での初診時から、一貫して右足部のしびれ及び痛みであり、検査結果にも大きな変化はみられず、札幌医科大学医学部附属病院の受診時には、原告の右足部のとう痛は慢性化しており、完全治癒が期待できない状態にあった。

証拠によれば、原告の症状は、精神的ストレス等により痛みの振幅があり、症状が悪化しないようにコントロールすることは可能であるが、治癒することが極めて困難であること、どの程度の期間が経過すると症状が消失または完治するか予想不可能であること、(平成7年8月31日に症状固定)平成10年6月15日時点でも原告のとう痛が残存していることを認めることができる。この事実によれば、原告の後遺障害は、就労可能期間にわたり残存すると認めるのが相当である。


A 大阪地裁平成11年3月4日判決

(事故で下肢神経障害を残す57歳男子について,広範囲に障害を残し、未だ疼痛が継続する被害者の事案につき、14%の労働能力を12年間喪失したものとされた事案)

→原告は、右後遺障害によりその労働能力の14%を症状固定時(57歳)から稼動可能期間である12年間にわたり喪失したものと認められる(医師の合理的な裁量の範囲で比較的長期間治療を続けたにもかかわらず前記後遺障害が残存したこと(事故日平成6年3月2日,固定日平成8年5月22日)、医師は改善の見込みなしと判断していることにかんがみると、労働能力喪失期間を稼動可能期間よりも短い期間に限定するのは相当ではない。


B 東京高裁平成14年9月25日判決

(症状固定時26歳男子アルバイトの事案で、12級12号相当の神経症状を残すものとして、41年間の喪失を認定した事例)

→事故後6年以上も経過した時点においても残存していることからすると、この後遺障害が近い将来消失するものと認めるのは相当ではない。

(3) 職業の特殊性から認めたもの

舞踏家・・・東京地裁昭和62年7月17日判決

(教室を持ち弟子をとって教える他、出稽古・舞台出演等の行なう38歳女子舞踊家が事故で頸肩腕症侯群、椎間板ヘルニア等で12級相当の神経障害を残し,67歳までの喪失期間を認定された事案。)

→原告は、その後遺障害のため、自らは殆ど踊れず、平素コルセットを装着しなければ行動が不自由であるなど、舞踊家としての活動に大きな支障を被っていることが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

右の事実、なかんずく、原告の舞踊家としての特殊性を考慮すれば、原告は、その後遺障害により、症状固定時の満44歳から満67歳までの23年間、40%の割合で労働能力を喪失したものと認めることができ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

 

10年以下に限定したもの

@ 京都地裁平成15年1月31日判決

(左膝半月板損傷等で調理場勤務の54歳女子)

→原告は症状固定時55歳の女性であるが、原告の後遺障害の内容程度、原告の職種(調理場仕事が主である。)を考慮すると、原告は本件事故の後遺障害により労働能力を14%、10年間にわたり喪失したと認めるのが相当である(原告は、労働能力の喪失割合は20%で、これが67歳まで持続すると主張するが、前記のとおり、原告の後遺障害は機能障害でなく神経症状であることに照らすと、原告の上記職種を考慮しても、上記喪失割合、喪失期間を超えるものと認めることはできない)。


A 大阪地裁平成4年5月15日判決

(男子高校生が手関節の可動域制限の後遺症を残す事案につき、機能障害の水準には達しないが、変形治癒の疼痛に由来するもので12級に該当するもので、卒業後10年間の喪失期間を認定した事案)

→その後残存した可動域制限は、変形治癒そのものに由来するものではなく、疼痛に由来するものと認められるものであって、その後遺障害はある程度の期間継続するものとは考えられるが、原告主張のように終生継続するものとは考えられない。 


B 神戸地方裁判所平成13年9月5日判決

(腰椎捻挫等の傷害を負った症状固定時30歳の主婦の腰痛等の後遺障害について5年間の労働能力喪失を認めた事案)

→担当医は、原告の後遺障害について「症状改善の見通しは乏しい。」との診断をしており、原告は症状固定日後10年間にわたる逸失利益を請求しているが、腰椎椎間板ヘルニアは通常は短期間(3ヶ月程度)で軽快するものであり、長期間改善が認められない場合には、発症後の椎間板の退行変化や日常生活上の何らかの要因等が原因となっている可能性があるのであって、当初の発症を誘発した事故の影響は、月日の経過とともに低下していくものと考えられるから、上記認定のとおり、症状固定日から5年間の範囲で逸失利益を認めるのが相当である。 


C 大阪地方裁判所平成15年8月27日判決

(右肘部打撲等の傷害を負った症状固定時41歳の男子教員の痺れ等の後遺障害について10年間の労働能力喪失を認めた事案)

→原告の後遺障害は神経の切断という器質的変化によるものとした上で,「器質的なものによるとはいえ後遺障害の内容は、神経症状であることから、労働能力喪失期間は10年程度と認められる」とした。


参考 他にも神経症状という理由のみで制限しているものとしては、

神戸地裁平成18年6月30日判決・・・「神経症状であることからすると」その他色々