遷延性意識障害(植物状態)余命年数・生活費控除・慰謝料

遷延性意識障害(植物状態)余命年数・生活費控除・慰謝料

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遷延性意識障害(植物状態)余命年数・生活費控除・慰謝料

交通事故による頭部外傷に起因して、被害者が遷延性意識障害(植物状態)になってしまうことがあります。
遷延性意識障害(植物状態)とは、医学書院の医学大辞典によると、「呼吸、循環、その他の自律神経機能は保たれているが、運動・知覚機能および知能活動がほとんど欠如した状態。上部脳幹から視床下部、視床、大脳半球にかけての広範囲に生じた不可逆性の障害。原因疾患は血管性障害、外傷、中毒、無酸素症、一酸化炭素中毒などで、いくつかの意識レベルを経過した後、慢性期にみられるほぼ恒常的な状態。
この判定には(1)自力で移動できない、(2)自力で食物摂取不可、 (3)糞尿失禁、(4)物を追視するが認識不可、(5)簡単な命令に応ずることもあるが、それ以上の意思疎通不可、(6)声は出すが、意味のある発語不可の6項目を満たし、かつ3か月以上継続・固定していること。睡眠と覚醒のサイクルは区別できるが外界からの刺激に対する反応はほとんどない。」と説明されています。

1 遷延性意識障害(植物状態)患者の余命年数の問題

交通事故に起因して被害者が植物状態になったときの問題点の1つは、余命年数の問題があります。植物状態以外の被害者の場合には、将来平均余命まで生存することを前提として損害額が算定されます。しかし、自動車事故対策センターの調べによると、植物状態患者の場合には、平均余命まで生存するケースが多くないようです。そのため、加害者保険会社側からは、自動車事故対策センター作成の資料ないし同センター宛に調査嘱託を申立て、それを証拠として、植物状態患者の余命年数を制限する主張をしてきます。
この主張を後押ししたのが、東京高裁平成6年5月30日付判決(交民27・6・1562)です。この判決は、植物状態になった原告の余命年数を、症状固定時は12年と推定し、認定しました。この東京高裁判決は、最高裁判決でも維持されています。(最判平成6年11月24日、交民27・6・1553) しかし、それ以外の多くの判決では、植物状態である原告の余命年数を健常者の平均余命まで認定し、介護費用を損害として認めています。
2002年当時の東京地裁27部(交通部)の河邉義典部総括判事は、2002年3月16日の講演において「交通事故の被害者に対して『あなたは後10年しか生存できないから、10年分の介護費用しか損害と認められない。』という判決を下すことに対して強い心理的抵抗があるというのが、裁判官の偽らざる気持ちであります。実際に、植物状態患者が事後後20年以上生存する例があり、中には症状が改善されて植物状態でなくなる患者が少なからずあるという事実からしますと、植物状態患者であるといっても、個別的に平均余命に満たない余命を認定することには問題があるように思われます。」と指摘しています。したがって、加害者、保険会社から、余命年数について制限するよう主張がなされたとしても、植物状態患者について健常者の平均余命まで生存を認定した多数の判例を引用し、反論することが大切です。

2 遷延性意識障害(植物状態)患者の生活費控除の問題

交通事故賠償における生活費控除とは、交通事故による死亡事案において問題となります。被害者が生存していれば、当然死亡までの間は生活費でいくらかが費消されることになります。しかし、死亡した場合には、それ以降生活費が全くかからず、その金額がまるまる被害者の遺族に払われることになります。そのため、逸失利益を算出する際に、生存している場合を前提とした金額から一定割合を控除して逸失利益を算出しようとするのが生活費控除の問題です。
この生活費控除の問題が、植物状態の場合にも争われる場合があります。つまり、植物状態者の場合、食費については流動食として病院における治療費に含まれ、被服費、教養費、交通費、通信費、交際費等はほぼ支出を要しないはずだというのです(東京高判昭和63年2月29日、判例時報1273)。このような考え方に基づいて、10〜50%生活費控除を認めた判決もあります。
しかし、この点についても、生活費控除を認めない判例の方が多数です。加害者、保険会社から生活費控除を主張されたとしても、生活費控除を認めなかった多数の判例を引用し、反論しましょう。

3 近親者の慰謝料

また、植物状態患者からの損害賠償請求においては、場合により近親者固有の慰謝料請求が認められることがあります。近親者の慰謝料とは、被害者が死亡、または死亡に比肩すべき精神上の苦痛を受けた場合に、被害者自身の慰謝料の他に近親者固有の慰謝料が認められるものです。植物状態患者の近親者の慰謝料請求について認めたものとしては、東京地判平成6・9・20(交民27・5・1254)、東京地判昭和58・9・26(交民16・5・1258)、大阪高判平成15・9・26(自動車保険ジャーナル・第1523号)、広島地裁福山支部判決平成16・5・26(自動車保険ジャーナル・第1550号)などがあります。